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「住ノ江の薄い家」についてのまとめ【1】

「住ノ江の薄い家」について、
前回は 内部の様子にも少し触れましたが、
建物の来歴など、さらに掘り下げてみます。

この建物はもともと石橋家の所有だった
ことまではわかっていましたが、
その別邸となる洋館であることから
「旧石橋家別邸洋館」の名を用いることにします。
以下は単に「洋館」と呼びます。

●航空写真で見ると、建物の位置関係が一目瞭然
浄暁寺をお訪ねした際に、1枚の
貴重な写真を見せていただきました。
昭和50年頃、お寺と、隣接する幼稚園とを写した
航空写真です。
元の写真はカラーですが、
それを下地として説明を加えたのがこちら。
「住ノ江の薄い家」についてのまとめ【1】_d0174510_09573018.jpg
洋館は、画面左端に写っています。
洋館の後方、赤線で囲った細長い土地が
石橋家邸宅の敷地だった部分です。
画面右上に木々の茂る庭があり、
それに続いて瓦屋根の本邸、そしてそこに
ぴたりとくっつくように洋館が
建っている様子がわかります。

●洋館は本邸の背後に付随した建物だった
この航空写真を見ただけで、
洋館が薄い理由が、かなりわかってきます。
現在では独立して建つ
薄い建物に見える洋館ですが、
もとは本邸背後の狭い土地に建てられた、
付随的な建物だったわけです。

母屋の一角にもけっこうな広さをもつ
中庭があります(ここにも立木が見える)
洋館がこの庭に接する部分は特に、
建物の奥行きが削られています。
これは中庭を広く確保するためだったのかと
想像されます。
「住ノ江の薄い家」についてのまとめ【1】_d0174510_10004713.jpg
▲現在の園庭から見た洋館。
手前の雪原全体に、屋敷が建っていました。
洋館に向かって右側には
ぴったりと接するように母屋が建ち、
左側、薄い部分に面して中庭がありました。


●建物はいつできたのか?
本邸の建物としては母屋と管理人用住宅(共に二階建て)
それに土蔵、物置があったそうです。
航空写真の瓦屋根からも察せられるように、
和風のお屋敷でした。
浄暁寺の今のご住職によると
「大正初期の建築と伝え聞いている」とのこと。

そこで洋館ですが、こちらの建築年も不明で、
本邸と同時なのか前後して建てられたのかも
定かではありません。

これはあくまで私の感覚なのですが、
どうもこの洋館はもっと後年の建物のように思われます。
アール・デコ風な幾何学的意匠、モルタルを吹き付けて
ザラついた仕上げにする“ドイツ壁”と呼ばれる外壁は、
昭和初期の建物を連想させます。
富岡のカトリック教会(昭和4年)
若松町の旧岡川薬局(昭和5年)
潮見台浄水場(昭和2年)あたりとも
似ています。

大正時代でも後期か、昭和に入ってから
建てられたものではないかと感じました。
建築にはシロウトですが、小樽の他の建物と
比べての印象です。

●敷地は急な傾斜地。建物は3階建て
園庭から撮った写真を見て、
もうひとつ気付くのは、敷地の傾斜です。
小樽の市街地は大部分が傾斜地ですが、
ここ住ノ江もその例に漏れません。

洋館右側の住宅は、盛り土と石垣によって
平坦地を造っていることがわかりますが、
洋館にはそれがない。
園庭側から建物に入るとそこが1階(「半地下」に近い)
市道側から入ると、階段を4段上がって2階という
建物内に段差がある構造となっています。

すなわち石橋家邸宅の敷地は、
市道側から本邸の側に向かって
すとんと落ち込む(落差2mくらい?)地形です。
それ故、本邸はその部分を避けて建てられ、
空いた細長い傾斜地を利用するべく、
(後年に?)建てられたのが、
この洋館だったのではないでしょうか。

●石橋邸のその後
石橋家がいつまでこの邸宅を
使っていたかは不明ですが、
その後、別な所有者がいたことは
わかっています。

昭和46年に浄暁寺が、市内の商業者から
邸宅全体を購入。
本邸を住職一家の住まいに、
洋館は書庫・書斎として利用します。
昭和61年、寺の施設、浄暁寺学園本部を
新築するため、邸宅部分を解体。
洋館だけは残り、そこに隣接する土地の一部が
幼稚園の庭となって現在に至ります。

この建物の昔の様子を伝える写真は、
残念ながら見当たりません。
唯一、小樽市総合博物館が所蔵する画像のなかに
洋館を写したものがありました。
昭和50〜52年頃、兵庫勝人氏撮影の
一連の市街地スナップのなかの1枚。

建物の姿は、基本的に現在と同じです。
この時点では洋館の背後に
本邸が建っていますが、それを写した写真は
残念ながらありませんでした。
「住ノ江の薄い家」についてのまとめ【1】_d0174510_10440682.jpg
石橋家や、建物について、
書くことはまだあります。
長くなるので、回を改めることにします。











by wilderness-otaru | 2017-12-27 10:53 | 小樽散歩 | Comments(0)
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