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森の中の廃線 〜旧士幌線のアーチ橋と鉄路跡〜

 先日、十勝方面に取材に行った折り、
ちょいと足を伸ばして見に行ったのが
旧士幌線の廃線跡。

 帯広から士幌、上士幌、糠平を経て
十勝三股に至る鉄道は
昭和14年に開通しています。
当初はさらに北進して十勝から石狩方面、
現在の石北線上川駅まで繋ぐという
壮大な構想もあったようですが、
大雪山の東の麓を縦貫する
鉄道の建設はあまりにも困難で、
着工されることなく
計画は立ち消えとなりました。

 それでも戦後しばらくまでは
十勝三股周辺の森林資源の輸送などに、
士幌線は一定の役割を果たします。
しかし林業の衰退とともに
鉄道での輸送量も減少し、
昭和62年にはついに全線が廃止されました。

 士幌線といえば
よく知られているのが廃線跡。
糠平周辺にはいくつもの橋がありますが、
いずれも鉄橋ではなく
コンクリート製のアーチ橋です。
建造から80年近くを経て
コンクリートは朽ちつつありますが、
それが自然景観に溶け込むような
独特の風景を見せています。
近年では〈北海道遺産〉に選ばれ、
地元でも貴重な史蹟として観光PRを図っています。
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▲奥に見える橋は「タウシュベツ川橋梁」。
湖に沈む橋の跡です。
 士幌線沿線では昭和30年、
ダム建設で糠平湖ができたことにより
一部の区間が水没し、
替わって新線が造られました。
タウシュベツ川橋梁は、
その水没区間にある橋なのです。
(すなわち完成から
わずか15年ほどしか使われなかった!)

この橋はダムの水位が下がったときにのみ
姿が見られます。
通常、夏のあいだは
見えないそうですが、
今年は水量が少ないため
この時期でも見られたのはラッキーでした。
国道から森の中を数分歩いた展望地から、
湖を隔てて橋の姿が見られます。
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 風化の進んだアーチ橋は
ギリシャの古代遺跡のような、
独特の雰囲気を感じさせます。
しかしこの橋は水没と凍結を繰り返す
厳しい条件にさらされ、
遠からず倒壊するおそれも
あるとのこと。

 これ以外にも見学可能な橋は
10ヵ所あまりあり、
国道をドライブしながら見学できます。

▼三の沢橋梁。橋の上が遊歩道となって
通行可能です。歩いても
どうということはないのだけど……。
新たに付けられた手すりが
ちょっと興を削ぐ感じ。
まあ安全のため仕方ないのでしょうが……。
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▼第四音更川橋梁(下2点とも)。
真ん中部分にあった鉄の橋桁は
撤去されています。
橋の上に生えた木が
すでにかなりの大きさに育ち、
歳月の長さを感じさせます。
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 地元ではアーチ橋めぐりのための
ガイドマップも作られ、僕が訪れた日にも
けっこうな数の見学者がいました。
本当はもっと見たかったけれど、
本来の目的地とは外れてしまうので
一部だけ見て引き返しました。

 旧糠平駅跡には鉄道資料館があります。
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 建物前に置かれている蒸気機関車の動輪は、
士幌線の末期に走っていた9600形のものではなく、
(何と!)この線にはまったく関係ない
C11形のを持ってきたのだそうです。
 キューロクにしては明らかに大き過ぎる……
と思って刻印がないかと見ていたら、
通りかかった関係者らしき男性が、
こちらの疑問を察してか、
わざわざクルマを降りて
説明してくれたのでした。
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 士幌線の歴史に関する展示がいろいろ。
アーチ橋めぐりに関する情報も
ここで仕入れられます。

 もうひとつの目玉は「軌道自転車」。
廃線跡のレールを自転車で走るという
おもしろい趣向です。
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 このファミリー、元気に漕いで
けっこうスピード出てました。
だーっと走って行ったと思ったら、
5分あまりで戻ってきました。
森の中のちょっと変わったサイクリング、
なかなか楽しそうです。








by wilderness-otaru | 2013-09-18 01:09 | 北海道の各地 | Comments(0)
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