先日は、手宮小学校の校庭にある
蒸気機関車C57の動輪のモニュメントの写真 を載せましたが、今回は同じ校内で、 その隣にある二宮金治郎の像について。 4年ほど前、とある出版物の特集記事で小樽の学校にある 二宮像のことを調べたことがあります。
その結果はなかなかおもしろいものでした。 二宮金治郎といえば古くから各地の小学校にある、 歩きながら本を読む姿の像が有名。 手宮小学校にあるのも、その基本形というべき オーソドックスな像です。 学校は高台にあり、像の後ろに 港が見えるのが小樽らしい景観。 この“基本形”とは別に、もうひとつまったく違った姿の 二宮像もあるのです。小樽では稲穂小学校にあるのが、それ。 これは幼い金治郎が故郷(現在の小田原市)で水害に見舞われた際、 自分自身はまだ幼くて復旧作業に携われなかった替わりに、 草鞋を編んで働く人たちを支えたという 伝記の一節を現したものだそう。 この像の原形は、稲穂小の卒業生である中野五一という彫刻家が制作しています (総合博物館にあるクロフォード像も中野の作品)。 小樽市内ではこのほか色内小学校にも稲穂と同型の像があります。 ちなみに市史によれば、中野氏は明治3(1870)年3月9日生、 昭和53(1978)年8月29日没。108歳の長寿だったことになります ▲こちらが色内小学校にある像。 同じ原形から造られているようです。 なお4年前に調べたところでは、 当時の小樽市内27校のうち二宮像があったのは9校で、 これはなかなか高い「二宮率」でした。 地元ゆかりの彫刻家がいたせいなのだろうか……。 ところで二宮金治郎って何した人? ……って 意外に知られていないのではないでしょうか。 金治郎(のちの尊徳[たかのり・1787-1856])は 独自の思想に基づいて、天災や飢餓に苦しみ疲弊する 農村の再建を進めた指導者なのです。 農家の生まれながら、多数の農村を建て直した功績が認められ、 晩年には幕府の役人に取り立てられてもいます。 ちなみに尊徳は身長が180cmを超える、 当時としては型破りの大男だった!! という 意外な事実も伝えられています。 ところでよく知られた金治郎の「歩きながら読書」というスタイルは、 事実に反するらしい。 これは伝記のなかにある「薪を売り歩きながらも勉学」という 記述(薪を売り歩くかたわらに、といった意味)を、 あまりにストレートに表現してしまった結果で、 実際のところ江戸時代のデコボコの山道を読書しながら歩くなんて、 とても危なくてできっこなかったようです。 二宮像は昭和初期、小学校での建立が 全国で一種のブームのように広がります。 小樽では記録に見られる限りでも 昭和12年に量徳男子校、稲穂男子校、若竹小学校、 13年に北手宮小学校で像の除幕式が行われています (北手宮小では当時の写真も残っていて、それを見ると 現在の稲穂、色内小と同様の草鞋を差し出す姿をしています)。 しかしやがて戦局が緊迫すると国を挙げて 金属物資の供出が強制され、多くの像が失われました。 小樽では昭和13年3月22日付けの新聞記事に、 銅像供出のことが報じられています。すなわち多くの像は 建立から10年足らずで姿を消したというわけ。 わずか数年程度で姿を消したものも少なくなかったはず。 現在ある像のほとんどは戦後に再建されたものです。 現在では富山県高岡市の平和合金という会社が、 多くの二宮像制作を手掛けているらしい。 この会社にも以前、直接取材して いろいろ興味深い話を聞くことができました。 像の本体は型から造る鋳物だが、背負っている薪や本などのパーツは 別に造って、あとから接合するのだとか……。 二宮像にまつわるいろいろな話、なかなか奥深いです。 ※二宮金治郎の名は「金次郎」と表記されることが多いようですが、 正しくは「金治郎」だそうです。
by wilderness-otaru
| 2013-10-07 17:58
| 小樽散歩
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