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港の風景 〜防波堤先端の知られざる記念碑〜

小樽港には南北両側から延びる
長い防波堤があります。

港の風景 〜防波堤先端の知られざる記念碑〜_d0174510_09020724.jpg
手宮側(写真では対岸)から延びるのが
〈北防波堤〉です。
明治30年5月に着工して
41年6月完成という難工事でした。
途中では日露戦争の影響で予算が削られる、
というできごともあったのだそう。
国内ではまだ本格的な外洋防波堤の築造に
成功事例がなかった時代です。
工事を指揮した工学者・廣井勇の名は
小樽ではよく知られています。

一方、画面手前から延びるのが〈南防波堤〉。
途中では一部に切れ目が入っていて、
南防波堤と呼ばれるのはここまで。
この先、白い灯台が建っている先端までの部分は
〈島防波堤〉と名前が分かれます。
さらに北防波堤の先から沖に向かって
斜めに延びる(先端に赤灯台が建つ)のが
〈北副防波堤〉、島防波堤の手前から
沖に延びるのが〈島副防波堤〉と、
それぞれに名前が付いています。

日常生活ではまったく縁がなく、
近くで見ることもない防波堤ですが、
最近になって観察してきました。
港の風景 〜防波堤先端の知られざる記念碑〜_d0174510_13532397.jpg

この先端にある丸いコンクリート製の台座は、
灯台の跡。
北副防波堤ができるまで、灯台が
ここに建っていた名残です。
この部分には人知れず石碑が設けられているのです。
その1つがこれ。
港の風景 〜防波堤先端の知られざる記念碑〜_d0174510_146578.jpg

碑文は『光波万里』。
南防波堤、島防波堤、
そして北防波堤の延長を含む
第2期工事の竣工(大正10年)を記念して
建てられたものです。

同じ灯台台座にもうひとつ。
港の風景 〜防波堤先端の知られざる記念碑〜_d0174510_14123954.jpg

『功績萬年』と刻まれたこちらは、
2期工事の指揮を執った工学者・
伊藤長右衛門の功績を称える頌徳碑。
伊藤は生前、自分が死んだら防波堤に
遺骨を埋めてくれと言っていたそうで、
遺骨の埋葬はかなわなかったものの、
それに替わって伊藤の遺品が
この碑の中に納められているらしい。
(遺骨が埋められている、とする文献もありますが、違うようです)

どちらも船に乗らないと見ることのできない、
“知られざる記念碑”といっていい存在です。

ちなみに小樽市史(10巻・文化編)のなかには
「いしぶみ・銅像等」という項目があり、
市内のほとんどの記念碑について解説していますが、
この防波堤上の碑のことは載っていません。
小樽開発建設部港湾事務所発行の
『小樽築港100年のあゆみ』という本には、
この碑のことが写真入りで紹介されていました。

そんな歴史ある防波堤のあいだから出てきたのは
〈ダイヤモンド・プリンセス〉。
港の風景 〜防波堤先端の知られざる記念碑〜_d0174510_14272269.jpg

6月7日の寄港時に撮影したものです。









 

by wilderness-otaru | 2014-08-01 14:34 | 小樽散歩 | Comments(2)
Commented by Y.O at 2014-08-08 02:41 x
港町の美しさが伝わってきます!とても素晴らしい風景ですね。まさか…台座までは泳いで行ったのですか?
Commented by wilderness-otaru at 2014-08-08 08:59
どちらかというと渋めの風景ですが、美しさをお伝えできて良かった! 台座まで……まさか(笑) シーカヤックを漕ぎました。本来なら大きな港で手漕ぎの小さなフネは危ないところですが、今の小樽港には大型船の航行が非常に少なくて、こんな呑気なことをやっていられるのです。
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