小樽港には南北両側から延びる
長い防波堤があります。 〈北防波堤〉です。 明治30年5月に着工して 41年6月完成という難工事でした。 途中では日露戦争の影響で予算が削られる、 というできごともあったのだそう。 国内ではまだ本格的な外洋防波堤の築造に 成功事例がなかった時代です。 工事を指揮した工学者・廣井勇の名は 小樽ではよく知られています。
一方、画面手前から延びるのが〈南防波堤〉。 途中では一部に切れ目が入っていて、 南防波堤と呼ばれるのはここまで。 この先、白い灯台が建っている先端までの部分は 〈島防波堤〉と名前が分かれます。 さらに北防波堤の先から沖に向かって 斜めに延びる(先端に赤灯台が建つ)のが 〈北副防波堤〉、島防波堤の手前から 沖に延びるのが〈島副防波堤〉と、 それぞれに名前が付いています。 日常生活ではまったく縁がなく、 近くで見ることもない防波堤ですが、 最近になって観察してきました。 この先端にある丸いコンクリート製の台座は、 灯台の跡。 北副防波堤ができるまで、灯台が ここに建っていた名残です。 この部分には人知れず石碑が設けられているのです。 その1つがこれ。 碑文は『光波万里』。 南防波堤、島防波堤、 そして北防波堤の延長を含む 第2期工事の竣工(大正10年)を記念して 建てられたものです。 同じ灯台台座にもうひとつ。 『功績萬年』と刻まれたこちらは、 2期工事の指揮を執った工学者・ 伊藤長右衛門の功績を称える頌徳碑。 伊藤は生前、自分が死んだら防波堤に 遺骨を埋めてくれと言っていたそうで、 遺骨の埋葬はかなわなかったものの、 それに替わって伊藤の遺品が この碑の中に納められているらしい。 (遺骨が埋められている、とする文献もありますが、違うようです) どちらも船に乗らないと見ることのできない、 “知られざる記念碑”といっていい存在です。 ちなみに小樽市史(10巻・文化編)のなかには 「いしぶみ・銅像等」という項目があり、 市内のほとんどの記念碑について解説していますが、 この防波堤上の碑のことは載っていません。 小樽開発建設部港湾事務所発行の 『小樽築港100年のあゆみ』という本には、 この碑のことが写真入りで紹介されていました。 そんな歴史ある防波堤のあいだから出てきたのは 〈ダイヤモンド・プリンセス〉。 6月7日の寄港時に撮影したものです。
by wilderness-otaru
| 2014-08-01 14:34
| 小樽散歩
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Comments(2)
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by
Y.O
at 2014-08-08 02:41
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港町の美しさが伝わってきます!とても素晴らしい風景ですね。まさか…台座までは泳いで行ったのですか?
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wilderness-otaru at 2014-08-08 08:59
どちらかというと渋めの風景ですが、美しさをお伝えできて良かった! 台座まで……まさか(笑) シーカヤックを漕ぎました。本来なら大きな港で手漕ぎの小さなフネは危ないところですが、今の小樽港には大型船の航行が非常に少なくて、こんな呑気なことをやっていられるのです。
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